CSV体験記1 血液検査装置

2015年08月18日

こんにちは

夏休みもとうとう終わってしまいました

私も田舎に帰省し、今回はホームセンター巡りをしてきました。
お手頃なミニトマトの肥料を探していたのですが、
田舎は趣味とは言え栽培の規模が違うようで、逆になかなか見つかりませんでした。

今までなかった視点でお店巡りをすると、新しい発見があって面白いですね。


さて、今日は前回からあまり間を置かずにCSV体験記の続きです。

前回はバリデーションマスター計画書の目次(だけ)をご覧いただきました。

前回の項目をご覧になってお気付きの方もいらっしゃるかもしれませんが、2004年当時に作成したバリデーションマスター計画書には、現在の「プロジェクト計画書」、「開発計画書」、「バリデーション計画書」の3文書の要素がすべて含まれている内容になっています。
言い方を変えると、文書形態が変わったとは言え、当時も今も記載すべき内容は変わっていないことがわかるかと思います。

昔を思い出しながら、バリデーションマスター計画書やこのプロジェクトについて、少し書いていこうと思います。


<文書の適用範囲>

1.適用フェーズ
このバリデーションマスター計画書では、システムライフサイクル(※)の構想フェーズからプロジェクトフェーズを対象としています。


2.適用業務
施設で実施する血液検査業務のうち、血液分析装置を用いた検査業務に適用することを記載しています。
当該業務には、血液分析装置の上位システムに対して行う関連業務も含めています。
業務と血液分析装置および上位システムの関連性を図解し、適用業務をわかりやすく示しています。


3.適用規制要件
GLP
Part11(まだER/ES指針がない時代です)



つづく


※:
システムライフサイクルとは、
システムの段階を「構想フェーズ」、「プロジェクトフェーズ」、「運用フェーズ」、「リタイアメントフェーズ」に分類したものです。




(13:52)

2015年08月10日

おはようございます

今日からまた一週間の始まりです。
会社さんによっては、もうお盆休みが始まっているようですね。

さて、今日は久しぶりにCSV体験記です。

前回の記事を読み返して何となく思い出してもらいながら、今回は当時のバリデーションマスター計画書の目次をご紹介しようと思います。

  1. 文書の目的
  2. 文書の適用範囲
    1. 適用フェーズ
    2. 適用業務
    3. 適用規制要件
  3. 用語の定義
  4. 役割と責任
  5. プロジェクトの背景
  6. プロジェクトの概要
    1. システム機能概要
    2. 関連文書
    3. 他システムとの関連性
    4. リスク評価
    5. ソフトウェアカテゴリ
  7. プロジェクト方針
    1. プロジェクト手法
    2. 外部業者の利用
  8. スケジュール
  9. 作成成果物
  10. 変更管理
  11. 文書管理
  12. 逸脱・障害管理
  13. システム操作手順書
  14. ユーザートレーニング
  15. 品質のモニタリング
    1. トレーサビリティ
    2. ミーティング
    3. レビュー
  16. 品質管理
    1. 品質管理手法
    2. 品質管理基準
    3. 外部業者品質保証
    4. 品質リスク
  17. プロジェクトの終結
    1. システムの受入れ
    2. 移行
    3. 運用開始以降のシステム管理

つづく





(10:36)

2015年07月10日

こんにちは。

久しぶりに今朝は晴れ間がのぞいていたので、自転車出勤をしてきました

改正道路交通法が6月に施行されてから1か月。
摘発No.1は「信号無視」だったそうです。

そういえば、イギリスでは安全だと思えば堂々と赤信号を横断します。
周りにつられて油断して踏み出してしまうと、気付けば車が接近!なんてことも。
道を横断するのもちょっとしたサバイバルです。


さて、今日は久しぶりにCSV体験記です。

前回の記事は、英語直訳風テンプレート提供のご案内まででした。
残念ながらご希望の声がかからなかったのですが、気を取り直してその後を思い出してみようと思います。


バリデーションマスター計画書を悩みながらまとめ、辛口コンサルタントにあれこれと言われながら数週間かけてやっとひとつの文書を書き上げました。
そのおかげもあって(?)、完成した頃にはバリデーションマスター計画書の目的だけではなく、バリデーションそのものの目的も気付き始めていました。

システムのバリデーションとは言っても、私がそれまでに経験していた分析法バリデーションの本来の目的と大差なかったのです。

分析法バリデーションでは、
「これから実施する分析方法が適正であるということを事前に検証して記録を残しておく」こと。

システムバリデーションは、
「これから使用するシステムの挙動が適正であることを事前に検証して記録を残しておく」こと。

どちらの目的も「品質」という点が最重要課題だったのです。
それに気づいてしまえば、後はそれほど難しいことではありませんでした。

業務で安心してシステムを使えるようにテストを実施する。
そのためにはあらかじめ計画を定めて、それに則ってテストを実施する。

バリデーションマスター計画書では、その計画に必要な項目を記載していけばいいのです。


つづく



(11:38)

2015年06月09日

こんにちは

自宅と会社との通勤中、あじさいを目にすることが多くなりました。
とうとう東京も梅雨入りです


さて、今日は、長~く引っ張っている初・CSV体験記に戻ろうと思います。

前回までの記事で2004年当時に頭を切り替えてから、今日の記事に戻ってきてもらえるとわかりやすいかなと思います。


前回ご紹介した解説付きテンプレート(雛形)にはもう一つ解読困難な理由がありました。
それは、テンプレートが英語の直訳だったのです。

一度読んだだけではすぐに頭に入ってこないため、何度も何度も読み返しました。
当時はインターネットでお手軽にCSVの情報が手に入るような時代ではなかったため、このテンプレートだけが頼みの綱です。

何とか理解しようと、記載項目の目的や、文書の目的、さらにはCSVの目的にまで遡り、独自の解釈をしていきながら、今回のプロジェクトに当てはめ、内容をまとめていきました。

この作業は非常に大変でしたが、今となってはCSVの本質を理解するうえで必要な作業だったのだと思い込むようにしています。


お時間のある方は、是非この方法でバリデーション計画書とバリデーション報告書を作成してはいかがでしょうか。

ご要望があれば、英語直訳風テンプレートを作成してご提供いたします。
コメントからお気軽にご連絡ください






(13:53)

2015年04月20日

おはようございます

今日から新しい一週間の始まりです。
春の陽気で起きるのに一苦労な朝が続きますが、会社に出勤したらシャキッとお仕事がんばりましょう


さて、今回はCSV初ミーティングが無事終了したその後のお話です。

初ミーティングでもらった宿題。
それは、バリデーション計画書(VP)のテンプレートを基に、今回の血液検査装置のバリデーション計画書をまとめていくことでした。

このプロジェクトの最初の山場、それは、解説付きテンプレート(雛形)の解読でした。
それまでIT業界とは無縁だった私にとって、頻出する業界用語やカタカナ語にとまどいました。

成果物?アプローチ?アサイン?スコープ?トレーサビリティ?などなど、普段の生活や業務では使わない単語が当たり前のように出てきているのです。

今こうやって書き出しながらも、改めて気付かされました。

今では無意識に使ってしまっている言葉でも、製薬会社の皆様にとっては馴染みのない言葉が多々あると思います。
ユーザーの立場での経験も生かして、なるべくわかりやすい言葉でお客様と接することができるように努めていきたいと思います。

このブログでもわからない言葉が出てきましたら、どうぞ辛口でコメントをお願いします。





(10:49)

2015年03月23日

おはようございます

週末は地域のあるイベントに参加してきました。

病院のブースでは、肺年齢を測ってもらいました。
「実年齢+11歳」という結果をたたき出し、軽度のショック症状です。。。

景品のタッチペンにつられて隣の乳がん予防コーナーにもお邪魔し、ピンクリボンをもらってきました。
来月の行田鉄剣マラソンでは、そのピンクリボンをつけて走ろうと思っています。


さて、今回は昔話シリーズです。
前回は少し話がそれて、電子記録の取り扱いについての現状をご紹介しました。

やっとここからCSV体験記の始まりです。
今回は、初めてのCSVのミーティングでの回想です。


10年以上前のとある日の午後、私は上司に連れられて会議室へ向かいました。
その日は確か、木曜日だったかと思います。

会議室では普段接することのないシステム部門マネージャーと試験部門のアドバイザー、外部のコンサルタント(※)とアシスタントの方が待ち構えていました。

いつも装置と向き合って検査ばかりしていた私は、その場の雰囲気だけで戦々恐々としてしまいました。

その後、私たち同じようなペアがもう一組加わり、初ミーティングの開始です。

つづく...

※:
所属していたGLP施設(新薬の動物試験を行う施設)のPart11対応やCSVを指導してくださっていた製薬業専門コンサルタントです。
別の言い方をすると、その後何カ月も続く「恐怖の木曜日」の根源です。





(10:02)

2015年03月09日

おはようございます。

さて、今回は昔話シリーズです。

前回は、Part11とCSVの関係性についてのご紹介でした。

前回の最後に私の出番を予告していたのですが、ご期待して下さっていた皆さま申し訳ございません。もう少しPart11、というより電子記録についてお話させてください。


ここ数年だけでも、IT技術は日々進化してきています。最近では、製薬業界向けにクラウド環境を提供するサービスも出てきているようです。

IT技術への依存度が増すと同時に、ITリスクによる影響の度合いも高くなってきています。
障害や災害発生時の対策は入念に検討しなければなりません。

そのため、製薬業界では電子記録の取り扱いリスクを抑えるために、ハイブリッド技が大活躍しています。

電子記録と紙記録のハイブリッド運用です。

10年前からと比べると、電子記録の割合は着実に増えてはきていますが、複数の製薬会社さんからお話をお伺いしても、やはり、完全に電子記録へと1本化することは難しいようです。

電子記録と紙記録の切り分けの境界線は、今のところ、データの重要性や特異性などからリスクを判断して、各社で方針を決めて進めていくしかなさそうです。

もし、電子記録の取り扱いなどでお悩みの方がいらっしゃいましたら、コメントからご相談を承ります。どうぞお気軽にご連絡ください





(10:47)

2015年02月26日

おはようございます。

最近、東京では寒さが弱まり暖かくなってきました。
目も痒くなり、花粉到来のようです。
電車の中では桜色の広告が増え、いろいろな面から春が近づいてきているのを感じる今日この頃です。


さて、今回は昔話シリーズです。

前回は、Part11の対応を検討し始める背景のお話でした。
今回は、それがどうしてCSV対応につながったのかのお話です。

2004年当時、何をすれば「Part11対応」と言えるのだろうかということを上の方々が検討した結果、CSVは欠かせないだろうという結論に達したようです。

なぜならば、Part11では、対象となる電子記録を取り扱うシステムの前提条件として、CSVの実施が求められていたのです。


=====  21 CFR Part11からの抜粋 =======

Subpart B-Electronic Records
電子記録

11.10 Controls for closed systems
11.10 クローズドシステム(※)の管理

Persons who use closed systems to create, modify, maintain, or transmit electronic records shall employ procedures and controls designed to ensure the authenticity, integrity, and, when appropriate, the confidentiality of electronic records, and to ensure that the signer cannot readily repudiate the signed record as not genuine.
電子記録を作成、変更、保持し、送信するためにクローズドシステム(※)を使用する者は、電子記録の真正性、完全性、(該当する場合は)機密性を保証するために、また署名者が署名した記録を本物でないと容易に否認できないことを保証するために、これらを考慮した対応と管理を実施しなければならない。

Such procedures and controls shall include the following:
このような対応と管理には以下が含まれる。

(a) Validation of systems to ensure accuracy, reliability,consistent intended performance, and the ability to discern invalid or altered records.
(a) 確性、信頼性、要件通りの性能の確保、無効または変更された記録を判別する能力を保証するためのシステムに対するバリデーション

===  21 CFR Part11からの抜粋 終わり ====


そこで、老朽化による更新の予定があった私たちの部署の血液検査装置に白羽の矢が立ったのです。やっと私の出番になりそうです。

つづく...


※:
クローズドシステムとは、

システム内の電磁的記録に責任を持つ者によって、システムへのアクセスが管理されているシステムのことです。
つまり、システム管理者によって権限が与えられたユーザのみが利用できるようになっているシステムです。





(10:32)

2015年02月20日

こんにちは。

前回の「非日常点検」について製薬会社の方からコメントをいただきました
次回同テーマの更新時に併せて、コメント内容を追記をしようと思っていますが、どんな内容か早く知りたい方は、こちらをフライングで見てみてください。

さて、今回は昔話の続きです。

2004年当時、製薬業界でもまだPart11に対する危機感は薄かったように記憶しています。
もしかすると私だけが危機感を持っていなかったのかもしれませんが

そんな中でなぜ私が所属していた施設がPart11対応の検討をすることになったのでしょうか。

それはズバリ、受託施設の宿命そのものだったといえると思います。

試験を委託する側の製薬会社さんにとっても、当時のPart11対応は手探り状態だったのではないでしょうか。
そんな製薬会社さんたちのところへご訪問に行くたび、営業さん方は「Part11対応はしているの?」という質問に遭遇していたのだろうと想像します。

そんなことで、当時、お客様が求めていることはできるだけ対応していこうという社風があった私たちの施設では、Part11対応に本腰を入れて活動を開始しようということになったのです。

つづく...




(16:00)

2015年02月17日

こんにちは。

今回のテーマでは、私の第一号のCSV体験、「血液検査装置」のCSVについてお話ししたいと思います。
初めてCSVに携わった時の苦労話や、どうやってそれを乗り越えたかについて、書いていけたらいいなと思っています。
途切れ途切れになってしまうかもしれませんが、前の記事に読み戻ったりしながらどうぞ粘り強くお付き合いください。


本題に入る前に、この血液分析装置のCSVを実施することとなった時代背景をご説明します。

10年以上前、私が所属していた非臨床試験受託施設では、Part11対応をどのような方針で進めていくかが上層部で検討されていました。

Part11(パート イレブン)とは「21 CFR Part 11」 の通称で、1997年にアメリカFDAより発出された、従来の紙ベースでの記録を電子媒体に置き換える場合の要求事項を規定したものです。

これはまだ厚労省ER/ES指針(※)もなかった、遠い昔のお話です。

つづく

※:
厚労省ER/ES指針(イーアール イーエス ししん)とは、厚生労働省が2005年に発出した「医薬品等の承認又は許可等に係る申請等における電磁的記録及び電子署名の利用のための指針」です。






(16:39)